俄か雨

しがないバンギャルのたわごと

ボヘミアン・ラプソディーを見に行きました 〜それでも物語を求める私たち〜 ②

前回の記事続きです。書く書くっつっててしばらく空いてしまった。その間に新しいブログ作りましたがそっちはそっちでまだ記事書いてないです。書けよ。
URLはこれです。
スト女子バンギャル、行政書士開業目指すってよ(仮)

仕事の話だけのブログって正直面白くなくね?とは思いますが、情報探してる人にしたらノイズかなーとも思うし、このブログの立ち位置ってとも思うし。どうなんだ。


さて本題。前回の記事では物語性についてぶちあげましたが、ここから先は割とバンド界隈(主語がでかい)(厳密に言うならV系界隈をメインに、自分が見聞きしたさまざまな世界といったところでしょうか)をメインに話をします。

私が知る古のバンギャル、というか、一昔前、だいたい私と同世代の人たちが好む物語は、「キラキラした特別な存在の物語」なんですよね。
例えば20代で東京ドームとかメジャーデビュー前にして武道館を埋めるだとか、そういったわかりやすいサクセスストーリー、「成功への階段を一足飛びに駆け上がっていく物語」だった。もちろんそれに付随する苦悩の物語もあるのだけど、それももちろん「選ばれし者たちの苦悩」なので、間違っても自分で楽屋裏でカメラを回した撮って出し(風)のものではない。生の声っぽくはあるんですけど、そこと観客の間にはライターと編集者、あるいはカメラマンと編集スタッフがいる。フィルター越しの、ある程度整形されたものが見えている。
例として思い浮かんだのがこの辺なんですけど。

月蝕―Luna Sea 1996 document

月蝕―Luna Sea 1996 document

月蝕〈2〉LUNA SEA 2000 THE FINEL ACT

月蝕〈2〉LUNA SEA 2000 THE FINEL ACT

こういう、「送り手と受け手の間に第三者の編集者がいる」形式に慣れるのが先か、この辺の世代が人間を別の存在のように崇拝できる割と最後の世代であるのが先か、卵が先か鶏が先かみたいな話ではありますが、最終的に我々のあり方としては「バンドは売れてでかい会場でやるに越したことはない」であり「特に接触イベントは求めていない、むしろ下々の我々のことなど意識にも留めないでいてほしい」であり「彼らは崇拝の対象」であり「我々とは違う世界の人」であって、「(いうなれば)偶像力の高いバンドマン」を求める感じにはなりますよね。
前にもこういう記事
大きいことはいいことだ? - 俄か雨
を書いた時に界隈バンギャルの学級会まとめなんかをいくつか貼ったのですが、やっぱ自分も含めてこのくらいの層(おおむね30半ば〜オーバー40くらい)ってバンドに対してもうちょっと神秘性、偶像力持っててくれよ!と思ってる節ある。

だけど、今のご時世、そういうある意味での「人間らしさの排除」って、結構難しそうだなと思うんですよね。
それはSNSの普及が原因かもしれないし、ライブ運動会化の流れでステージの上は神様ではなくてせいぜい運動会を取り仕切る先生くらいになってしまったせいかもしれないし、およそCDというものは握手会の券を買うための手段かコレクターズアイテムかになってしまったせいかもしれないし、数字を出さないといけない会社のせいかもしれないし、その会社に居続けるために仮にファンに媚売ってでも枚数捌かそうとする本人たちのせいかもしれない。
それこそ企業の不祥事だって、隠そうとしてもどこかしらから情報が漏れるご時世じゃないですか。編集した動画を撮って出し風にしたところで、結局前後の模様が漏れてくる。それなら差し障りのない範囲を初めから出してしまった方が良いという判断もむべなるかなというか。

今現在の大御所層にしてみても、偶像力を失わない限度を探りつつ割とそちら方面にシフトしているように思えるのですよね。出せる範囲で人間らしさ、親しみやすさを出していく方向というか。
それこそ昔はメンバーの出てくるインストアイベントなんて出てきたての頃しかなかったのに、ここ何年かでトーク会だのお渡し会だのと始めるようなバンドもあったりで。

界隈内でもキーワードの変遷、ありますよね。
例えば、界隈内では客席の動きを揃えることがよしとされる風潮があるのですが、ギャの皆さんのヘドバンの揃いっぷりがすごいと評判だったFEST VAINQUEURというバンドがあります*1。そこのギャを評して曰く「軍隊」のよう、なのですけど、これ、10年20年前、同じような一糸乱れぬフリが有名なPierrotだったら「宗教」となっているところ。
いや、フェストは軍服ぽい衣装もあったり、ピはピでもうモチーフから何から、何もかもが宗教がかっているので*2その辺の補正もあるかもしれないですが。歌詞にもあるよね、「万能になった俺が神になる」って*3

ついでにいうと「世界観のあるバンド」がここ最近はいまひとつうけない、というのもそういう流れの一環なんじゃないかなあ。その方向性にもよるけれども、彼らが依って立つ「世界観」を維持するためには「リアルっぽい、人間臭いもの」は極力排除する必要があるから。そうすると必然的に「リアリティ番組系ストーリー」は表に出しにくくなる。
一定の層に需要はあるので、やり出す人がいれば需要の受け皿にはなるんじゃないかなとは思いますが。いやでも、その辺を求めてる層は昔からいるもっと「キラキラした特別な人」、「偶像力」の高いバンドマンのファンを昔からやっていそうだから、新しく出てきた人たちがどこまで取り込めるかはなかなか難しいのかもしれませんが。ニッチ市場を求めている人がいたら頑張ってみてほしい。

前回の冒頭あたりにちょこっと書いた、hide周辺が鼻につく話。あれも、故人を利用してる感が強いことに加えて、「不朽のカリスマ」感を前面に押し出すことに躍起になっている感じに辟易している感覚があるのかも、と書いてて思いました。いや彼が不朽のカリスマであること自体には何ら疑いはないんですけど、というか、むしろカリスマであるがゆえに、共感性はめっちゃ低いんですよね。リアルタイムの世代、というか、2019年現在だと40代~30代後半くらいの世代あたりだと演者もファンもひとことでいうとヤンキーが多いので、絶対的カリスマを求める傾向が薄くなったとしてもある程度の共感性はあったのでしょうが、今そういう層の受け皿になってるの、違うところだしな。ラブドリームなんたらさんとか。
一番強いのはいつまでも金儲けに使われてることであるとしても、すごい人なんだよエピソードを延々と垂れ流し続ける界隈への違和感みたいなものも、「もういいから」感の一因な気も。白血病のファンの子~骨髄ドナーのあたりのエピソードとかは私にとってみたら既知の話だから「おうおう知ってる」くらいの話であるけども、聴きながらふと、これ今のご時世に聞いて「すげー神じゃん」となる可能性どれだけあるのかなって。白血病のファンの子に会いに行きました、にしてもそれって一人だけ特別対応なの?確かに一人だけ会場に来るのも難しかったりして大変な状況ではあるけれども?みたいな反応になりそうだし、それに続く骨髄ドナーにしても、すごい人だけど自分には真似できない、住む世界違いすぎるわーってなりそうな。

勿論、どちらがいい悪いとかではないです。ただ私たちが育った時代はある意味時代が良かった、というのは頭に置いておかないといけないかなと思います。
つい先日もちょうどこういう話になったんですけど、確かに今のバンドって当時に比べたらよく言えば破天荒でめちゃくちゃな奴がいない、悪くいえば武勇伝もなく小さくまとまっている。
実際、そのリプ返やる暇があるなら曲の構成考え直したら?とかライブの前夜に皿回して深酒……は中堅どころのお遊びがほとんどなので除外としても、それ、本業なり売るための付随手段なり、何らか意味あります?どうなんですか?みたいな行動に終始しちゃってるように見受けられる人たちも結構います。
でも、正直に言って、90年代あたりのバンドブームに乗れた破天荒バンド、生まれるのが何十年か遅くて今この2010年代に出てきたとしたら、果たしてどのくらいが生き残れるでしょうね?
界隈全体をみても、昔と比べたら時間とかコストの概念がガバガバだったり問題行動起こすような人を「レジェンドだから、才能があるから、そういう人は他がダメでも仕方ない」「武勇伝があってこそ大物」みたいに評価する風潮、薄れてきましたよね。主催の側になっているならともかく、出してもらっている身分で時間も守れないわ問題行動を起こすわでは先が思いやられる。
ついでに言うと界隈だけでなく業界全体、昔に比べたら若い子でもはるかに演奏や歌唱はうまい子たちがどんどん出てきている。「それ以外にいいとこ一個もないけど何かやってやろうという気概だけは感じられる」となれば勝てるだろうが、逆に、「曲はちょっといいかもしれないけど、時間にはいい加減だし楽しませる気がないしで足を運びたくなる魅力がない」となれば、家で配信だけ聞いて終わりになってしまってどうにもならないでしょうな、とも。


最終的にバンドって、存在そのものが物語じゃないですか。少なくとも、我々観衆の側から見れば。各メンバー個人の人生というよりむしろ、バンドというまた別の有機体の歩みみたいな感覚で見ている人が多いのじゃないかなと思います。
だからその歴史、というかその物語性に自覚的な人っていうのが最終的には強いように見えます。求められているのがどんなストーリーだとしても。

これだけ長々書いといてオチがない(言いたいことはとりあえず前の段落)という酷い文章に仕上がりました。タイトルに立ち返ると、ボヘミアン・ラプソディーはまた見たいですね。アカデミー賞とったしもうしばらくやってるかな。また行きます。たぶん。

*1:今は一時活動休止中

*2:同じ軍は軍でもナチスモチーフを始めWWIIあたりのモチーフが地味に多い

*3:ちょっと状況違うんじゃないのとかは置いといて