俄か雨

しがないバンギャルのたわごと

【全力でネタバレ】シン・ゴジラを見に行った

全身全霊でネタバレしています。










前評判にある「むっちゃエヴァ」「馬鹿が誰一人いない」が最後の最後まで波状攻撃できたのでもう満腹です〜って感じになりました
おまけにMX4D初体験してしまったのでちょっとしたアトラクションでした。でもうっかり買ってしまったポップコーンに気を取られたから次回は普通ので見ます…。



序盤の興奮しどころは「たかなみだ!」「三沢からF-2が飛んだぞ!」「ああっうん百万!うん千万!いや億!ああ億が飛んでる…!国家予算が…!」でした(謎の興奮のしどころ)。ああいう映画の楽しさ。札束でひっぱたくってこういうことやで…ってああいうシーンを見るたびに思います…。(違う)
あと都内勤務神奈川在住なので「ああっあそこが!」という面白さもありました。特に第二次上陸の際の武蔵小杉駅前の爆撃シーン、あの辺りって、謎に再開発に力を入れていて駅前にタワーマンション立ってて、他に高層ビルないわけじゃないんですが、確かにあの一角ちょっと高層なんですよね。それにもうゴジラによって横浜側の高い建物はなぎ倒されているだろうし。だからあの駅前タワーマンションの異様な突き出しっぷりが本当に面白くてですね。
ていうか、鎌倉から上陸して武蔵小杉駅あたりから多摩川を渡るということは概ね横須賀線湘南新宿ラインが走っているルートに近いんじゃないでしょうか…。見たことある景色~!!!!!
鎌倉のシーンは平屋の建物が非常に多くて、ゴジラでけえ!って感じだったので、その辺もまたリアル。戸塚過ぎたあたりから高い建物が少なくなっていって(沿線に工場?とかある)大船から鎌倉方面は高い建物減る印象ある。大船自体にもあまり多くはないかな…。


あとは展開がとにかく早い。早い早い。阿呆が引っ掻き回して右往左往みたいなありがちストーリーに慣れきった頭ではストーリーと人物は把握できたけど人の名前が覚えられなかった。まじで。でも逆にメインとなるキャラクター以外名前を覚えさせないようにしているのか?これは複数回見るのもやむなしというのは納得。
というか、確かに特撮くらいはこういうカタルシスを得たいよなあ〜と思う。人類の叡智!国の技術の粋!プロジェクトを完成させるべく奔走する人々!すっげー!かっけー!みたいなものを何も考えずに味わいたい。ツイッターでこういう感想を見て納得したのですが、確かに阿呆に右往左往させられるのは現実だけで十分です。
なんかもう突破口がものすごいな…。マキ元教授の遺留品に折り紙があるのを思い出したシーンは鳥肌が立ちました。まあ確かにその後の展開はあまりにもだだだーっと進みすぎて、それ本当に大丈夫なのか?と一瞬頭をよぎりましたが、あの状況下なら確証がどうとか言ってる間にやれそうなことをやるしかないとも思う。

ヤシオリってあとで調べたらヤマタノオロチを撃退した酒なのね。経口で凝固剤を飲ますという作戦にはまさにどんぴしゃり。
あと、あとに書く話の先取りになりますが、ラストシーンのゴジラの尻尾、この作戦名からの連想でいくと、ヤマタノオロチの尾から出てくるのは天叢雲剣なわけだが、じゃあゴジラの尾から出てくるものとは?という考察を読んで、そういう見方もあるんだなあと思いました。あの中からまた、それこそ巨災対メンバーに指摘されてたような無性生殖からの有翼形態が出てくるなんて可能性も大いにある。
っていうか序盤の変態の過程すごく面白かったよね…なんかナチュラルに川を遡上してる途中の手がない感じのが第一であのなんかヌメヌメした感じの(目がまたちょうキモかった)ナマズかなんかをしゅっとさせたみたいな…あの前脚の名残みたいなのが生えつつあるのが変態の過程なんだと思ってた。オタマジャクシが手が生えるみたいな説明されてた気がするから、途中で手足が生えるんだろうと思ってて、あああれ確かにオタマジャクシの生えかけの手だわあと思って、あれが第二なんだろうと思ってたらそういうことでもなかったっぽい。最初の海ほたるあたりにいた長いしっぽが第一なんですね。であのぬめっとした魚的サムシングが第二、足が生えた段階が第三、第二次上陸からのいわゆるゴジラフォームが最終、第四形態になる、でいいんですよね。序盤はまだ小さかったから(第二次上陸で体長が二倍になったという言及があったはず)、目がすごく大きくてぎょろっとしてて気持ち悪かったんですが、第四形態になってからは「目どこだよ!」くらいに小さくなっていて、どれだけ大きくなったのかは一目でよく分かりました。いずれにせよ気持ち悪かった…。

でここまで書いて気づいたけど確かに海から襲い来る巨大ナマズ(みたいな何か)、川を遡上し船を押し流し、陸に上がって家々を押しつぶしていく、この映像、このワード、すごく既視感がある。確かにこれは311と言われるのも納得。

あと本当に細かすぎる感想ですが、ドイツの研究所にスパコンを並列につなげて解析に協力してくれと依頼したときの、研究所のたぶん偉いさんであるおばさまの発言がとってもキリスト教人道主義を生きるリベラル系研究所って感じが溢れてて、ドイツ人だーーーーーって思いました…。見た直後にわたしにこの映画を勧め続けていた人と話をしたのですが、あの一神教的倫理観というのは日本人にはわからない、生命倫理系の議論なんかは全然理解できなかった、と言われて、まあ私も単にキリスト教の洗礼を受けてキリスト教に近い環境で育ってきただけの日本人なので微妙なところはあるのですが、あれはそういう環境に身を置かないと理解はできないと思う。日本人は結局のところ世界で起きている出来事の大半を動かす原動力であるところの人々の持つ物差しとか倫理観とかそういうものを理解できてないから世界の出来事の大半を理解できていない。と思います。なんだろうな。宗教を持てとかそういうことではなくて、本当に住む世界というか見てるものが全く違うんですよ。その辺は宗教学とか倫理学、哲学といった学問がカバーすべき地平だと思うのですが、その辺を頭の片隅で理解してるかしてないかだけでもだいぶ理解が違うと思う。
ことに理系に多いんですが(各種例外はある)、何か定説となった事象だって結局どうしてその辺は着想に至ったのか、の背景にはその人、その人を育んだ各種共同体、もっと大きく言えば社会や国、その地域の思考のあり方、みたいなものが少なからず関わってくるわけで、その辺を理解せずにいる人たちの思考というのはとっても浅いところで終わってしまうわけです。まあどこまでもドメスティックな仕事に終始するならそれで十分なのでしょうが。

とここまで全力で書いたあとにネタバレ読んだらドイツ語を聞き取れる人いわく「日本人を信じましょう」と言っているらしく…ええっそれだいぶというか大幅にニュアンス違うぞ!?いいのか字幕あれで。


話が大幅に逸れた。あまりにもネタバレしすぎて詳細を書くのが憚られるのですが、最後の最後、フランスの大使に頭を下げ続けていた里見さん、本当に神がかっていた…。やられた…!ただの運良く生き残ったボンクラじゃなかった。しょっぱなからラーメンのびちゃったよ〜とか言ってるから完全に油断した。すげえ人だ。そこで生きてくる泉政調会長の発言、「フランスにはコネがある」…やばいな…。ジャパニーズ政治家だわ…。


あと石原さとみはものすごい賛否両論あるようなのですが(名前と立場を考えたらあんなにアジア人に寄った見た目の人間が出てくるはずはそもそもないというのは確かにそうだ)、でも金髪碧眼で祖母がうんぬんと言われてもリアリティがないなと思うし、私の思い込みというかセリフの聞き違いだったらあれなのですが彼女被爆3世だと思われること言ってませんでした?そうでもない?普段生きていく上では何の影響もない事象なので取り立てて言うこともそんなにないのですが一応被爆3世として生まれた者として*1、アメリカと日本の間に立つものとしていろいろ思うところはあるのだろう、というのでその存在に妙なリアリティを感じたわけです。あと初代ゴジラの設定としてある、原水爆実験の所為で、というくだりの流れをくんでるなと。どうも最近のゴジラはその辺うやむやだと聞きましたが。最後の沈黙の中映るゴジラの尻尾といい、その辺へのリスペクトを感じました。わたしはね。

最後の竹野内豊のセリフ、この国は何度も立ち上がった、だから今回もきっと立ち上がれる、そんなニュアンスのセリフがあって、あれも多分賛否の一因というか政治的と言われる一因な気はするのですが、でも個人的にはあれ好きです。

やっぱり今の時点でリアルな核、原子力との戦いと言ったら核実験よりは核廃棄物の処理問題であり5年前から今に続く福島第一原発という事象であるわけで、昔のゴジラに使われた超兵器みたいなものではなく、科学の粋を集めた物質を作って凍結させた。それもリアルに日本人が見てきたものに近しいと感じる。
最後、結局ゴジラは東京駅に鎮座したまま日が暮れていき、核を使うタイムリミットは止められただけでまたゴジラ復活の兆しがあれば動き出す、というあたりもその辺を想像すると示唆深く感じる。

前半の第一次上陸の際、蒲田あたりの踏切に逃げ遅れた人がいて、攻撃を中止するよう言うんだけども、あのシーンがあるからこそ日本(のゴジラ)かなあという気もするし。あそこであのおばあちゃん背負ってる人を気にせず撃ったらそれはハリウッド映画だ。そこに視線がクローズアップしてしまうのが日本らしいところというか。NYに出たとしても核を使う、という発言(これ自体は昔のゴジラシリーズのセリフに元ネタがあるらしい)のもそれを強化する。でも、ifの話として、どちらかと言えば合理的な判断としてはそこで叩いてしまう方が本来なら被害も少なかったのかもしれない。あの二人は確実に死ぬだろうが、でも2度目の上陸までもしかしたら時間が稼げたかもしれない。それが必ずしも正解だとは思わないが。悩ましいね。

そう考えると、本当に日本の総力戦で、ニッポン対ゴジラというコピーは一ミリも間違ってなかった。

あと会議シーン。私はすごく面白かったです。みんな早口だし。あと防衛大臣がリアルすぎて笑った…。ああいう分野に造詣のある女性ってだいたいあの手のイケイケなタイプが多いので(偏見)。見てて院の時にお世話になった教授を思い出した…。あと、前半の会議シーンはコメディパートみたいに言ってる考察が結構あって、それも確かにそうだなと。あと個人的に思ったのは、前半の文書主義の中の好きにしてないシーンを散々映しておくことで、後半部ののっぴきならない事態の中で「好きにした」人たちの本気がドラマティックに映るのだろうなと。対比です。


とりあえず、あと1回は見たいなと思います。と言いつつ結局マッドマックスも1回しか見なかったからDVDとかで見るかもしれない。

*1:祖母と父の兄姉が被爆者で、父は戦後、祖母が結構年いってからの子供なので私のいとこ世代の中にも被爆2世と私のような被爆3世が混在してる